ときめき分類学

ときめきに種類があると知りはじめたばかりだから

推しとわたし

私の10年来の推し俳優(隠す意味も特にないのですが照れくさいので以下「推し」といいます)がついに2019年夏に帝国劇場に立つ、という情報が解禁されたのは2018年の12月だった。私はそれを推しのツイート通知で知った。
役はメインビジュアルに載るようなプリンシパルではない、けれども物語が動く中で重要な役割を持ったキャラクター。私はミュージカルに詳しくなく、その役割を当初理解できていなかったけれども、名前の位置でその重要性を把握した。

 

私が初めて推しを観たのは2008年12月のミュージカル「テニスの王子様」@(旧)日本青年館。手足が長くてダンスが映える美しい人だなと思った。当時推し20歳。翌月、所謂「テニミュ式成人式*1」が観たくて、急遽静岡公演に行くことを決めた。これは私にとって生まれて初めての遠征だった。翌月さらに事務所が主催する出演舞台を観に行き、ついでに事務所にもドハマリした。

このときから10年弱、正直に言って「歌が上手い人だ」と思ったことはなかった。でもクセのある声は好きだったし、ラップは上手いなと思ってた。子供の頃からラッパーとして活動してただけのことはある。
舞台を中心に活動する中でミュージカルに出演することも少なくなかったものの、正直聴くに堪えないレベルなこともあった。それによって嫌いになってしまうのが怖くなって、いくつか出演ミュージカルを観に行かなかった時期もある。(今となっては後悔してます)

 

転機は2017年のミュージカル「キューティ・ブロンド」だったと思う。歌声が開いた。正直昔の推しはミュージカルどころか普通の舞台でも千秋楽頃になると喉を潰してたくらい喉が(というか喉の使い方が)弱かった*2からかなり驚いた。これは初の東宝ミュージカル出演で、さすが東宝は歌唱指導がしっかりしてるんだなあ、と当時は単純に嬉しかった。陰で相当自主トレをしていたことは後に三浦春馬さんによる暴露で知ることになる。

 

2018年6月には、同年10月の浪漫活劇「るろうに剣心」で初めて小池修一郎先生の演出作品(ただしこれは東宝ではなくて松竹、ミュージカルではなくて浪漫活劇)に出演することが発表された。私は小池先生の大ファン!というわけではなかったけれど、先生と一緒に仕事すること自体は大変喜ばしいことだと思ったので、出演情報解禁直後のイベントで本人に「小池先生演出作品に出演されるの嬉しいです」と伝えたら「本当?それは良かった」と微笑まれたのを何となく今思い出した。その頃にはエリザベート出演なんてとっくに決まってたっぽい。言ってよ。(?)

エリザベート情報解禁後の生放送か何かで推しが自分の口から発表してくれたとき、「ようやく帝劇」と言っていたのが印象に残っている。ようやく、と思ってたんだ、とまず思った。ようやく。帝国劇場に。
上述のとおり、「歌が武器」な人ではなかったから、推しを好きになった頃にこの未来――推しが帝国劇場に立つ未来――は想像してなかった。でもキューティ・ブロンドのあたりから「もしかしたら」「いつか」と思い始めて、そしてそれが現実になって、それを「ようやく」と本人の口から言ってもらえて。こんなに嬉しいことがあるでしょうか。


エリザベート自体は過去にも観たことがあった。2015年東宝版で、城田トートと古川ルドルフを目当てに観に行った。何なら二人のキス見たさだけで行った。何と不純な…。そんな私でも圧倒されたくらいには面白かったけど、それでも当時の私にはまだ早かったのかもしれない。作品の大ファンになるというまでではなかった。せっかく旧演出版を観たという今となっては貴重な経験をしているのに何がどう違ったかとか全然覚えてないのが悔しい。

そんな作品に今回、2019年に初めて向き合えたことは私にとって本当に幸せなことだった。もちろん私はプリンセスでも皇后でもなければ美女でもないけど、自分のこと、仕事のこと、結婚、家、愛と死…、エリザベートのテーマを自分ごととして観るようになったからかなあ。

それで今では作品自体が大好きになって、今更ながら2016年公演のDVDを買ったり、宝塚版やウィーン版との違いも気になって宝塚初演の映像を見たり本を読んだりウィーン版の音源を聴いたり…、さらには世界史やドイツ語の勉強もしたり、エリザベートが好んだといわれるすみれの砂糖漬けを食べたり。学生時代より正しく夏休みの自由研究した感じがする。

推しはいつも適切な時期に適切な作品へと私を導いてくれるなあとつくづく思う。

 


6月7日から8月26日まで全108公演、無事に閉幕して本当に安心した。

エリザベート自体の感想はここでは書かないけど、推し、まあ発展途上ですよね。特に歌。それは色んな人に言われたとも思うし本人もわかってると思う。でもここ数年の伸び率を見てきたからこそ素直に「発展途上」だと思えることが嬉しい。伸びしろです。

来年のエリザベート全国ツアーに推しが出るかどうかは今はわからない。でも少なくとも約3ヶ月後にはまた帝国劇場、じゃなかった帝国劇城で観られることが決まっているので今はそれを楽しみに、心の平穏を保っている。

 

 

これからも新しい世界に連れて行ってもらえることを楽しみにしています!

 


『Elisabeth』 2019 JAPAN TOUR

 

*1:先日発売されたテニプリ20周年記念本「テニプリパーティー」に推しはお祝いコメントを寄せた。その中で推しは「20」という数字に掛けて、自分のテニミュ式成人式のことを書いていた。私にとって大切な記憶を、このタイミングで推しも思い出してくれたことが嬉しかった。

*2:つい先日、今度初舞台で初主演を務める後輩くんのLINE LIVEで推しは「先輩からの助言」として「(昔は)声を張ってはすぐ痛めていた」と振り返るコメントを出していた。そのとおりです。